2012年10月26日

あなたの個性はなんですか

NNNドキュメント
ひろむとカッパ先生
〜僕は自閉症アーティスト〜


「恐竜びっくり箱」
「絶好鳥」
「カッパうな」
「happy」
これらの作品を作ったのは高山洋武(ひろむ)さん22歳。
彼は自閉症である。
自閉症は生まれつきの脳の機能障害だ。
個展で子供が「これなに?」と聞くと洋武さんは
「I have a dream」と答える。
それは彼の最もカラフルな作品の名前だ。


洋武さんは言葉の遅れがありコミュニケーションをとるのが苦手だ。
自閉症の人の中には特定の分野で驚くような能力を持つ人がいる。
彼もそのうちの一人であり、十歳から始めた陶芸で才能を一気に開花させた。

しかし成長するに従いその才能は壁にぶつかった。
そこで、ある陶芸家との出会いが彼を変えていった。
去年4月 、長野県安曇野市 。
カッパ先生こと陶芸家の野崎遊河童(ゆうがどう)さんが
初めて洋武さんに会いにきた。
そこで見たのは常識にとらわれない自由で個性的な作品たち。
洋武さんが作るのはユニークな動物やオリジナルのキャラクターなど。
小学生の時から作リ続けた作品は数百点。同じものは二つと作らない。

「かなり衝撃を受けた」
「人に訴えかけてくるものがある」
「負けましたね私は 」とカッパ先生は言う。

2歳になっても視線が合わず、言葉も遅かった洋武さん。
病院の診察で自閉症だとわかった。
しかし、小さい頃から部屋粘土細工が得意だった洋武さん。
11歳の時に作った「エリマキカメレオン」という作品が金賞に選ばれた事から陶芸に没頭、
溢れるような勢いで作品を作り続けていった。
中学、高校の頃は多くのコンクールに入賞、高校卒業後、父の武彦さんは障害を抱える息子を自分の会社に入れ、
彼に創作の場を与えた。

ところが、有り余る時間、仲間のいない環境、両親の期待。
もんもんとした日々が続き、創作への意欲が失われていった。
そんな悩みを抱えていた頃、両親は彼を連れ、新潟県糸魚川市へ旅行に行った。
そこでたまたま陶芸工房を覗いた。
それがカッパ先生との出会いだった。

カッパ先生は海外にも知られた陶芸家だ。その作風を見て両親はひらめいた。
「洋武と合うんじゃないかな 」と感じたという父の武彦さん。
カッパ先生に指導してもらうことで洋武さんに再び意欲が湧くことを両親は期待したのだった。
幼い頃から漫画家志望だった洋武さん。
ノートには自身が描いたキャラクターがびっしり詰まっている。
カッパ先生があることを提案した。
「今度これを作ってみようか 」と。
洋武くんのノートに書かれていた「トタロウ」という亀のキャラクターだ。
なんと互いにこれを作って勝負しようというのだ。
プロの意地、カッパ先生も負けるわけにはいかない。

いよいよお互いの作品が出来上がった。
カッパ先生の完敗だ。洋武さんの発想力にはかなわなかった。

更に陶芸の違う世界も知ってもらいたいとカッパ先生は洋武さんを糸魚川の窯に連れて行った。
洋武さんにとって蒔を使う本格的な窯は初めてだった。
カッパ先生の作品と一緒に洋武さんの作品も焼いてみた。
しかし、焼き上がりを見た洋武さんは何か言いたそうだ。
色のついてない作品に物足りなさを感じているようだ。
色に強いこだわりを持つ洋武さんはいつも釉薬で色を付け、本焼きをする。
仕上がりは洋武さん独特の色合いになる。
しかし今回は色をつけない焼き方だったのだ。
作家として一歩前に踏み出してもっらいたいというカッパ先生が与えた試練だったのだ。

カッパ先生が月に一度来るようになってから1年、地元で作品展を開催することになった。
そこで5年前の未完成作品、巨大な龍を出展しないかという話が持ち上がった。
何度も挑戦しては失敗をくりかえした未完成の作品。
一回目は開いた時に尻尾が割れた。
二回目は鱗をつけている最中、焼く前に折れてしまった。

「どうにかしてやりたい気持ちが強くて言い過ぎてしまった」
と当時の事を思い出し、父親の武彦さんは言う。
これをきっかけに洋武さんは作品作りから遠ざかってしまった。
それ以来、龍の尻尾の話は親と子のタブー。

「あの龍、もう一度作ってみない?」
カッパ先生は洋武さんを説得してみた。
父にはできなかった説得をカッパ先生が果たしてくれた。
洋武さん、いよいよ5年越しの龍の完成に挑む。

翌週、早速尻尾の制作が始まった。
カッパ先生、突然二回目の尻尾を壊し始めた。
まず大事なのは尻尾とそれ以外の部分との大きさを合わせることだ。
大きさが合わなければそもそもくっつかない。
そのため、あんこと呼ばれる芯の部分を取り出し、そこに再び粘土を盛っていくのだ。
しかし、尻尾を壊された時何も言えなかった洋武さん。
気持ちが集中できない。
「壊すんじゃなくて柔らかくしてくれればよかったのに 」
1度気分が乱れるとなかなか創作する意欲が沸かない。
そんな時は休憩が一番。
カッパ先生は迷わず洋武さんを休ませる。

しばらくして気持ちを切り替えて鱗をつけ始める。
尻尾だけで300枚を貼り付けなければならない。
納得いかない洋武さん、最初からやり直す。
3日かけ、合計四回作り直してやっと完成した。
5年前に作った胴体の鱗に今回の尻尾の鱗が互い違いになるように作った。
合わせてみるとぴったり模様がつながっている。
洋武さんはこれを頭の中で組み立てていったのだ。

作品の形を作るまでは洋武さん、それを焼くのは父。
これまでずっと続いている二人三脚だ。
洋武さんは窯にお祈りをする。
足かけ5年、三度目の挑戦。
今度はうまく焼けるのだろうか。

火を入れて 20時間。
窯出しだ。
割れていた。
「何が原因なの ?」
「もうあれ捨てよう ?」
一度感情が高ぶると抑えが効かない。
こういう時、両親は洋武さんを責めない。
厳しく接した子供の頃、言うことを聞かない時は押し入れに閉じ込めたこともあったという。
「自閉症の子には怒るよりも褒めてあげてください」
そう病院の先生には言われたがなかなか簡単にはできなかった。

今までは割れてしまうと見向きもしなかった。
しかし、この後洋武さんは父にこう言った。
「どうしようかねぇ、どうしようお父さん 」
どうやら今回は違うようだ。
作品展に間に合わせたいだけど気持ちが前に向いていかない洋武さんの気持ちを察した父は手を差し伸べることにした。
父は割れた尻尾をつなぎ合わせ息子を待つことにしたのだ。

7月地元安曇野市での作品展。
あの巨大な龍は果たして完成したのだろうか。
なんと会場には鮮やかな色が付けられた巨大な龍が堂々と鎮座していた。
親子で作ったその作品は「飛竜」と名付けられた。
翼を広げて自由に飛び回る願いを込めて。
洋武さんは父が尻尾を繋いでくれた龍に一ヶ月経ってからようやく色を塗り完成させた。

自分のことを認めてくれる人との出会いというほんのちょっとのきっかけで人は変わることができる。
「親にはできないことをやってもらえた」
洋武さんの父はカッパ先生に感謝している。
さて洋武さん、今度は何を作るんだろうか。



洋武さんの近況はこちらで見ることができます。
http://tesco.ne.jp/index.php?id=57
あの巨大な龍の製作途中の写真もあります。
文章だけで彼の作品の良さを伝えるのは難しいですが、
非常に味のある、そして個性的な作品が多く、
見ていて幸せな気持ちにさせてくれます。

それに何といっても両親がすばらしい。
彼の個性を第一に考え、陶芸に没頭できる環境を洋武さんに提供。
それによって洋武さんは自由に作品作りに熱中できる。
自分の子供がもし、洋武さんのように自閉症だった場合、
同じように個性を見出し、それを活かすようにしてあげられるのだろうか。
考えさせられました。

洋武さん、これからも障害に負けず良い作品を作ってください。




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posted by ドキュメントまにあん at 14:20| Comment(0) | TrackBack(0) | NNNドキュメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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